佐藤優さんが語る奥深い示唆と生々しい現実

  • 2012.07.22 Sunday
  • 08:02
 佐藤優1 佐藤優2
710日、「国家の罠」など数々のベストセラーを世に出した佐藤優さんが絆サロンで「日本の閉塞感をどう打ち破るか」のテーマで話してくれた。誰も知るように、佐藤氏は該博な知識と情報を武器に最近は幅広い社会の事象に鋭い論陣を張る作家として活躍しているが、外務省時代はロシア問題を専門とする主任分析官であった。佐藤氏と私は、1980年代末の旧ソ連時代の末期、物不足の激しかったモスクワの日本大使館で文字通り「同じ釜の飯を食った」同僚であり、当時の経験から私は氏の超人的な能力や行動力に敬意を抱いている。佐藤氏も、当時ソ連からの独立運動を始めたリトアニアに私と一緒に出張したときのことやそのころの日本大使館の様子などを生々しく語ることから話を始めた。

 講演では、佐藤さんの博覧強記や情報通ぶりが大いに発揮された。哲学や思想、歴史や文化論も繰り出し暗喩や逆説もあるが、はっと驚くような外交の舞台裏のエピソードを披露して聴衆を惹きつける。具体的な個々の話も興味深い一方、物事を大きく捉える部分には大いに示唆に富むものがある。単純な脳の構造の持ち主である私にはわからないところもあったが、1時間余りの熱弁の中で、佐藤さんはこう言ったのではないかと私なりに解釈したところをいくつか述べてみたい。

 

 いま世界は「新しい帝国主義が到来」したような変化の時代にある。日本は国際社会が変化する中でそれと異なる動きを示して閉塞状況にあるが、日本は独自の動きのできる国民であり、チャンスはあり、それを生かせば日本の将来を楽観することも可能である。しかし、「悪魔は細部に宿る」。日本には現在「耐エントロピー構造」がない。

いま話題のTPP(環太平洋経済連携協定)についても、「世界の帝国主義的再編」の中で日本の地位を築く上でも参加が必要であるが、日本社会は閉鎖的な面もあり、こうした世界の動きをどう活用していくかが重要な課題だ。世界はその時代時代で国家間に様々な合従連衡がおこる。個人としても、哲学者田辺元が戦時中に説いたように、有限な生命にどう向き合うか、国のために捧げるという姿勢も重要である。ギリシア語の「ロゴス」には、言葉、心、力、行為などの意味がある。国民がこれらの4つの要素を身につけることは国力の増進にも役立つ。変動極まりない国際社会のなかで中国やロシアの思惑や力の均衡を探る変化を見極めて動く必要がある。

昨年の大震災以降、領土問題に関する報道が多くなった。大震災やその他で日本が弱くなり、相対的に中国やロシアが強くなって、それぞれの領土の境界線を移動させようとしている。日本は尖閣列島や北方領土問題などで関係国から押されてばかりいる。細部も重要で、領土問題に関するやりとりの歴史的事実も踏まえなければならない。

野田総理は日露の戦略的提携の必要性を理解しているようだ。5月には前原政調会長をモスクワに派遣してプーチン大統領の側近にあたらせた。鈴木宗男議員も動いている。元総理の森喜郎氏にお願いしてプーチン大統領との間で戦略的提携に向けた道を探る考えもあり、自身の訪ロも頭の中にある。先般のメキシコのロスカボスでのG20サミットで日露首脳会談が行われ、北方領土問題の交渉を再活性化することが合意されたと報じられたが、事実ではない。相手側への真意の伝達などに関して日露間の意思疎通に齟齬もある。齟齬があればその後の関係修復を難しくする。国際関係は極めて複雑で、全体像把握は容易ではない。今日のさまざまな動きの中で何が正しいか、誰が正しいかを判断するには各国間やその指導者の間での信頼感が不可欠である。信頼感が欠けていると不信が増幅する。現在、日本の外交に明らかな能力の停滞がある。関係国との信頼関係の欠如をどう克服するかが重要だ。そのためには真の専門家も必要だ。

佐藤優4  佐藤優3

サロン参加者には佐藤さんの著作を何冊も読んでいる人も少なくなかった。そのせいか、難解な部分もあったが話は面白かったという人が多かった。講演と質疑の後の懇親会では、わからないところやもっと知りたいと思う人が次々に来て佐藤さんを囲み、列を作るほどであった。名刺交換や写真撮影にも気軽に応じた佐藤さんには食べたり飲んだりしていただく時間もないほどで、申し訳なく感じている。テーマが大きいのでまだまだ聞きたいことは山ほどあり、また佐藤氏との接点があることを望む声もあった。

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